大輔くん ありがとう…
2011年3月11日
わたしは
大切な友を亡くした
それまで フィギュアは彼女と共に観るのが常だった
その日から
フィギュアを観ると彼女と観ていた時のことを思い出してしまうから
わたしは フィギュアに封印をした
それまでは 遠く離れた彼女と
スカイプを繋ぎながら
それぞれの選手の演技について
語り合ったり
大昔の選手の動画を一緒に観たりしていた
カタリナ・ビットさんのカルメンとか
キャンデロロさんのダルタニアンとか
それはそれは本当にすごかった
こんなにも長いことスケートを観ているのに
わたしは技の名前とか なにもわかっていなくて
何がサルコーでトゥループでアクセルでルッツなのかがさっぱりで
とにかく軸がしっかりしてさえいれば美しいのだ！
なんて思っていて
そんなわたしにも ちゃんと技の説明をしてくれていた
足の踏み込み方の違いとか エッジワークとか
色々教えてくれた
わたしなんか ずっと右脳で観ているようなものだったから
彼女がせっかく説明してくれても
そのはしから すぐさま忘れてしまって
「今のはトリプルルッツ？」
「ううん 今のはサルコー」
「えええええええええ」
ってなことの繰り返しだった
今は一人で やっぱり技の名前なんかよくわからなくて
美しいか否か 何かが伝わってくるか
ただそれだけをずっと観続けているわたしだ
彼女は ほんとはこんなわたしに呆れていたかもしれない
「あなたらしい観方だよね」
って
いつも言ってくれていたけど
何度も技の名前を教えてくれているのに
一向に覚えようとしないわたしを アホめ！って思ってたかもしれないな
理論的な部分は ぜーんぶ彼女にお任せしていたから
一人になった今は テレビの解説聞きながら技を確認している
でもやっぱりまだ今も覚えられていない
フィギュアを観ていると
それらもろもろの事が思い起こされて
わたしにとっては 辛いことの方が多くて
もう二度とフィギュアは観られないんじゃないかと思ってた
ところが
今年 それはやってきた
当然のごとく四年に一度行われるソチ五輪
何気なくつけたテレビで それは華々しく開催されていた
最初は彼女のことばかり思い出されて
これ以上観ることはできないと思ったのだけれど
いつしか 氷上の舞に魅入られてしまっていた
彼女と一緒に観れていた時のように
あーだこーだとツイッターでつぶやきながら
観戦させてもらった
深夜のツイッターのTLが
わたしのフィギュア実況で埋め尽くされてしまって
それでも文句ひとつ言わずにいてくださった
フォロワーの方々にはひたすら感謝している
ソチ五輪での大輔くんを観ていて
涙が止まらなかった
彼女が心から愛した大輔くんの表現力を観ながら
どうかどうか！ 精一杯出し切って欲しいと思っていた
エッジワークのキレの良さから目が離せない
大きな怪我をも乗り越えて
大輔くんがたくさんしてきたであろう苦労を思ったら
わたしは やっぱり どうしても大輔くんに
メダルを獲得して欲しかったなって思ってしまってた
わたしの大好きな インマイライフも
選曲に組み込まれていて
涙で観れなくなりそうだったけど
彼女の分までちゃんと観ようと思ってぐっと堪えた
12年前 有明のリンクで
初めて生で大輔くんの滑走を観た日のこと
今も忘れられない
一番安い席で 遠い処で オペラグラスなしでも
大勢の中で大輔くんのシルエットだけで
そこにいるのがわかるほどに
大きな華を纏っていた
ソチ五輪での合計得点 250.67
この時点でメダルの可能性は潰えた…
けれど
大輔くんが笑顔でいてくれることが何よりで
おそらく最後の五輪であろうと言われていたソチで
彼にとって悔いのない滑走が出来ればそれでいいと思っていたけれど
大輔くんが笑顔であればあるほどに
なんだか こちらの方が辛くなってしまった
もう 五輪で大輔くんを見ることが出来ないと思うと
本当に寂しくて
わたしのフィギュア観戦人生のほとんどを占めてきた高橋大輔という選手の
集大成とも言える五輪で
メダルのご褒美をあげたかったなぁという気持ちで
いっぱいになってしまった
でも 最後の滑走をちゃんと観られた
絶対的エースの大輔くんの存在なくして
今日までの日本男子フィギュアの道は拓けなかったし
羽生くんの金メダルだってきっとありえなかっただろうと思う
間違いなく 大輔くんが日本のフィギュアを引っ張って
さらに引き上げてくれていた
ありがとう 大輔くん
本当に本当に ありがとう
今日の会見では
再び競技生活に戻る可能性も示唆していたけれど
ひとまず お疲れ様でした
今は亡き彼女の分も
お疲れ様と言いたいです
